【定理・公式・証明】高校数学定理・公式 – 数学Ⅰ – 展開公式・因数分解公式 +α

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展開公式・因数分解公式 +α

展開公式・因数分解公式
 ① $(a+b)^2=a^2+2ab+b^2$
 ② $(a+b)(a-b)=a^2-b^2$
+α (数学Ⅱ,または,教科書非掲載)
 ③ $(a+b)^3=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3$
 ④ $(a+b)(a^2-ab+b^2)=a^3+b^3$
 ⑤ $(a+b+c)^2=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca$
 ⑥ $(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)=a^3+b^3+c^3-3abc$
変形公式
 ⑦ $a^2+b^2=(a+b)^2-2ab$
 ⑧ $a^3+b^3=(a+b)^3-3ab(a+b)$
 ⑨ $a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca)$
※ $(a-b)^2$ , $(a-b)^3$ の公式は,①,③において $b=-b$ として考えます。

【解説】

以下、 $a$ ~ $f$ , $p$ , $q$ , $r$ は実数とします。

まず,展開の基本として,整式の乗法は

$\begin{eqnarray} (a+b)(c+d) &=& (a+b)C \\ &=& aC+bC \\ &=& a(c+d)+b(c+d) \\ &=& ac+ad+bc+bd \end{eqnarray}$

$\begin{eqnarray} (a+b)(c+d)(e+f) &=& (a+b)CE \\ &=& aCE+bCE \\ &=& aE(c+d)+bE(c+d) \\ &=&  acE+adE+bcE+bdE \\ &=& ac(e+f)+ad(e+f)+bc(e+f)+bd(e+f) \\ &=& ace+acf+ade+adf+bce+bcf+bde+bdf \end{eqnarray}$

というように,整式を文字で置くことによって分配法則を適用できる形に落とし込むことができます。

しかし,実際に数学を学ぶ上で常に上記のような方法をとっていては1歩進んだ理解につながらないので,積極的に公式を活用するようにし,公式が使えなかったとしても,下記のようにかっこのまま文字で置かずに変形できるようになりましょう。

$\begin{eqnarray} (a+b)(c+d) &=& a(c+d)+b(c+d) \\ &=& ac+ad+bc+bd \end{eqnarray}$

特に,中学校までは「展開せよ」という問題が試験で出題されますが,高校ではそのような問題よりも,展開を利用して解く問題の方が圧倒的に多くなりますので。

色々な式の形に「見覚え」があり,息をするように展開,因数分解ができるのが理想的ということです。

最初は公式を暗記して代入するしかないかもしれませんが,続けていけば,公式を意識せず,手が勝手に動いてくれるようになるはずです。

ちなみに,こういった公式は暗記するといっても,上記のような $a$ と $b$ の式ではなく,「左の2乗足すかけて2倍足す右の2乗」といったように,動的,絵的に操作できればなんの問題もありません

なお,上記公式の⑦~⑨は展開,因数分解ではありませんが,対称式・交代式(※後述)等において頻繁に用いられる変形なので押さえておきましょう。

証明

$\begin{eqnarray} (a+b)^2 &=& (a+b)(a+b) \\ &=& a(a+b)+b(a+b) \\ &=& a^2+ab+ab+b^2 \\ &=& a^2+2ab+b^2 \end{eqnarray}$

$\begin{eqnarray} (a+b)(a-b) &=& a(a-b)+b(a-b) \\ &=& a^2-ab+ab-b^2 \\ &=& a^2-b^2 \end{eqnarray}$

①より,
$\begin{eqnarray} (a+b)^3 &=& (a+b)(a+b)^2 \\ &=& (a+b)(a^2+2ab+b^2) \\ &=& a(a^2+2ab+b^2)+b(a^2+2ab+b^2) \\ &=& a^3+2a^2b+ab^2+a^2b+2ab^2+b^3 \\ &=& a^3+3a^2b+3ab^2+b^3 \end{eqnarray}$

$\begin{eqnarray} (a+b)(a^2-ab+b^2) &=& a(a^2-ab+b^2)+b(a^2-ab+b^2) \\ &=& a^3-a^2b+ab^2+a^2b-ab^2+b^3 \\ &=& a^3+b^3 \end{eqnarray}$

$\begin{eqnarray} (a+b+c)^2 &=& (a+b+c)(a+b+c) \\ &=& a(a+b+c)+b(a+b+c)+c(a+b+c) \\ &=& a^2+ab+ca+ab+b^2+bc+ca+bc+c^2 \\ &=& a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca \end{eqnarray}$

$\begin{eqnarray} (a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca) &=& a(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)+b(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)+c(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca) \\ &=& a^3+ab^2+c^2a-a^2b-abc-ca^2+a^2b+b^3+c^2a-ab^2-b^2c-abc+ca^2+b^2c+c^4-cba-bc^2-c^2a \\ &=& a^3+b^3+c^3-3abc \end{eqnarray}$

①より
$a^2+b^2=(a+b)^2-2ab$

③より
$\begin{eqnarray} a^3+b^3 &=& (a+b)^3-3a^2b-3ab^2 \\ &=& (a+b)^3-3ab(a+b) \end{eqnarray}$

⑤より
$\begin{eqnarray} a^2+b^2+c^2 &=& (a+b+c)^2-2ab-2bc-2ca \\ &=& (a+b+c)^2-2(ab+bc+ca) \end{eqnarray}$

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因数分解(たすき掛け)

① $x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$
② $acx^2+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d)$

【解説】

因数分解とは,整式を2つ以上の整式の積の形で表すこと,つまり,展開の逆変形ですが,展開のように作業的に変形することはできないので,何を展開したらこの整式になるのか常に想像しながら取り組むことが重要です。

とはいえ,展開の逆変形ということは,展開公式がそのまま因数分解公式として使えるので,公式に該当する形であれば問答無用で因数分解すること「は」できます

ここではそういったものは省き,上記①,②のような形の因数分解を取り扱います。

そもそも「たすき掛け」とは①や②のような因数分解をするときに使う筆算のようなものですが,考え方を図式化したものにすぎないのでここでは扱いません。

※余談ですが,筆算は特定の計算や変形を「作業化」したものなので,数学を「学ぶ」上では不必要と考えます。早く,正確に,無思考で「作業」をしたいのであれば有用でしょうが,その「作業」の中にも数学的に思考すべき部分があるので,筆算を多用することは理解を深める阻害になると考えます。

ここでは,①,②の呼び名が特に決まっていないと不便なので,便宜的に「たすき掛け」と呼ぶようにします。

たすき掛け①

$x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)$

これは公式ではありますが, $x^2-x-6=(x+2)(x-3)$ というように, $-1$  と $-6$ から $2$ と $-3$ を見つけるという作業があるため,この等式自体に慣れるのに時間がかかるかもしれません。

当然,2次方程式を使えば作業的に求められますが,ここでは推測で変形する方法に焦点を当てます

では,$x^2-x-6$ を例にして因数分解のしかたを考えていきます。

中学校では,「たして $-1$ ,かけて $-6$ になる2つの数を探しましょう」と習ったかと思いますし,それに慣れているのであれば問題ありません。

しかし,「たして」をさきに考えるより,「かけて」を最初に考えた方が選択肢が少なくてすみます

なぜなら,2数を整数に限定したとき,「たして $-1$ 」になる数は無限にあるのに対して,「かけて $-6$」となる組合せは, $(1,-6)$ , $(2,-3)$ ,$(-1,6)$ , $(-2,3)$ の4つしかないからです。

もっといえば,数の組合せとしては, $(1,6)$ , $(2,3)$ しかないので,この組合せを頭に置きつつ,定数項の符号を見てプラスなら和,マイナスなら絶対値の差が $x$ の係数の絶対値になるような組合せを選ぶのがよいでしょう。

ということで,①の因数分解を考える手順としては,

  1. 定数項の符号がマイナスなので,かけて $6$ ,差が $1$ になる2数を探す→ $(x \ \ 2)(x \ \ 3)$ まで確定
  2. 最後に和が $x$ の係数になるよう符号を定める→ $(x+2)(x-3)$

となります。

回りくどいようですが,実際には考える範囲を絞っているので係数が複雑になっても有用ですし,この手順を常に守ることで,②の因数分解も上手くなるはずです。

たすき掛け②

$acx^2+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d)$

①と比較すると $x^2$ の係数が $1$ ではないですが,基本的な考え方は変わりません

では,$6x^2+x-12$ を例にして因数分解のしかたを考えていきます。

まずは $x^2$ の係数 $6$ と定数項 $-12$ に着目して,積が $6$ , $12$ になる組を考えます

  • $6$ :A $(1, 6)$ ,B $(2,3)$
  • $12$ :C $(1, 12)$ ,D $(2, 6)$ ,E $(3, 4)$

積の組の組合せは全部でAC,AD,AE,BC,BD,BEの6通りですが, $x$ の係数が偶数か奇数かによって積の組を絞り込むことができます。

この問題では $x$ の係数が $1$ で奇数,つまり, $ad+bc=(奇数)$ ということになります。

$ad$ と $bc$ が整数だとすると,和が奇数になるのは $(奇数)+(偶数)$ の組合せしかありません。

つまり, $ad=(奇数)$ , $bc=(偶数)$ と仮定すると,偶数と奇数の積の関係から, $a$ と $d$ はともに奇数であり, $b$ と $c$ の少なくとも一方は偶数,ということになるので,奇数の含まれていない組(D)は省かれます

さらに,定数項の符号と $x$ の係数 $1$ に着目します

定数項がマイナスなので差が $1$ になる組合せを探すわけですが,差が1ということは2つの積,公式でいうところの $ad$ と $bc$ の絶対値の差が $1$ ということなので,AやCは優先順位が低くなります。

なぜなら,単純に $a$ ~ $d$ に入る値の絶対値が大きくなればなるほど,差が $1$ にはなりにくいからです。

例えばAとCの組合せのとき,$a$ ~ $d$ の組合せで差が最小になるのは, $a=1$ , $b=1$ , $c=-6$ , $d=12$ のときですが,それでも $ad+bc=6$ となって差が $1$ にはなりません。

ということで, $x$ の係数が小さいときは,BやEのような,絶対値の差が小さい組を使った組合せから考えます

これら2つの条件から,最初に試すべき組合せはBとEということになります。

実際に $a$ ~ $d$ の値を考えてみると, $3 \cdot 3-2 \cdot 4=1$ より, $a=3$ , $b=-4$ , $c=2$ , $d=3$ となるので,$6x^2+x-12=(3x-4)(2x+3)$ と因数分解することができます。

ということで,②の因数分解を考える手順としては,

  1. $x$ の係数が奇数なのをふまえ,積が $x^2$ の係数 $6$ ,定数項 $-12$ になる組を考える。
  2. $x$ の係数が $1$ なので,絶対の差が小さい組を使った組合せから順に当てはめて考える。

となります。

ざっくりしてはいますし,問題によって考え方は変わりますが,このようにして絞り込んでから当てはめていくという方法が妥当ということです。

公式や2次方程式に頼らずこれを繰り返すことが,たすき掛けの因数分解に慣れる唯一の方法です。

※余談ですが,因数分解は無限にありそうに思えて,因数分解された1次式の係数が1桁,かつ共通因数をもたない(共通因数でくくれてしまうので)とすると,その組合せはそれほど多くはありません。

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