受験は団体戦ではない
「受験は団体戦である」という言葉を聞いたことがあるかな?
学校や塾の先生が口にしそうな言葉なんだけど,はっきり言って受験は団体戦じゃない。
安心させるための口上なのか,本当にそう思っているのか,はたまた,塾への勧誘のために言っているのかは分からないけど,そんなわけがない。
当然のように「受験は個人戦」だと思っていた子どもたちには,その意外性が受けるのかもしれないけどね。
受験は自分と受験校との一騎打ち。
本番は誰も助けてくれないし,誰かを助けることもできないよ。
こんな言葉に騙されて,自分の学力が伸びないのを人のせいにしてもいけない。
0から100まで自己責任。
自分でやったことだけが今の自分を作っているんだから。
ただ,戦友を作るなって言ってるわけじゃないからね?
マズローの自己実現理論
次の話をするために,この理論を紹介しておくね。
自己実現理論とは,アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した理論で,人間は自己実現に向かって絶えず成長すると仮定し,人間の欲求を5段階の階層で理論化したもの。
人間の基本的欲求(階層の低い順)
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- 生理的欲求 (Physiological needs)
- 安全の欲求 (Safety needs)
- 社会的欲求,愛と所属の欲求 (Social needs / Love and belonging)
- 承認(尊重)の欲求 (Esteem)
- 自己実現の欲求 (Self-actualization)
- 自己超越の欲求 (Self-transcendence) ※のちに発表された階層
人の欲求は5段階あって,一番下の欲求が満たされると次の段階の欲求が現れ,それが満たされるとさらに次の段階の欲求が,と続き,最終的に自己実現の欲求を満たすために人は行動する,ということ。
それぞれの欲求は言葉の通りだから詳細は省くけど,気になるならぜひ調べてみてね。
ちなみに,第5の欲求まで満たした者を自己実現者,第6の欲求まで満たした者を自己超越者というよ。
受験と自己実現
残念ながら,学校という集団生活,周りと比較するのが当たり前の環境に慣れていると忘れがちなことがある。
それが,受験も含めた自分の行動のすべてが,今後の自分がどうなるかということに関わってくるということ。
それは,目先の受験合格ではなく,もっと近くて遠い,自分自身の現在と未来の話。
マヒしている人は,自己実現理論における第3段階の欲求を満たすために受験をする。
要は,○○大学に入りたい,将来○○になりたい,という欲求。
これは非常に残念。
夢を持つのは大事だけど,夢を叶えて満足することがそれ以上に大事だと感じてほしいんだ。
義務的に目的もなく受験に臨む人には当てはまらないけど,そうでない人にとって受験というのは一つのチャンスになるはず。
それは,「周りと同じことを同じようにしている自分」から,「自分の力で自分の考えた理想に近づこうとする自分」になるチャンス。
烏合の衆から,一匹狼になるチャンス。
自分の思い描く英雄になるチャンス。
自己実現理論における第4,5段階の欲求を満たすチャンス。
ぜひこのチャンスを活かしてほしい。
なぜ受験をするのか。
もちろん,大学に合格するため,大学で学びたいことがあるから,大学を経て就きたい職業があるからという理由も大事。
だけど,自分がどうなりたいか,という,自分のためだけの問いを常に忘れないでほしい。
自己実現理論を見ると,第4段階までの欲求を満たすためには他人が必要だよね。
自己実現理論において最も高い第5段階に自己実現の欲求があるのは,それが,他人との関わりによって満たされることよりも難しいから。
自分自身の問題より,他人が関わることの方が満たされにくいと思いがちなんだけど,実はそうじゃないんだよ。
他人の思いを排除した状態で今の自分に満足できるかどうか,それが人にとっての最高次の欲求であり,課題であるということ。
なりたい自分になろう。
そう考えられるかどうかが,僕が思う大人と子どもの違いだよ。
まとめ
少し難しい話になってしまったけど,高校生にはぜひ真剣に考えてもらいたい。
自己実現とは何か。
なりたい自分とは何か。
人生は長いようで短い。
自分にとっての最高の欲求が満たされるよう,最高の人生を送ろう。