約数と倍数
【定義】
2つの整数 $a$,$b$ について,ある整数 $k$ を用いて $a=bk$ と表されるとき,$b$ は $a$ の約数であるといい,$a$ は $b$ の倍数であるという。$a=bk$ のとき,$a=(-b) \cdot (-k)$ でもあるから,$b$ が $a$ の約数ならば $-b$ も $a$ の約数である。
自然数についての倍数の判定法
- 2の倍数:一の位が偶数
- 3の倍数:各位の数の和が3の倍数
- 4の倍数:下2桁が4の倍数
- 5の倍数:一の位が0または5
- 6の倍数:2の倍数かつ3の倍数
- 8の倍数:下3桁が8の倍数
- 9の倍数:各位の数の和が9の倍数
素数,合成数,素因数分解
【定義】
素数:2以上の自然数で,正の約数が1とその数自身のみである数
合成数:2以上の自然数で,素数でない数
因数:整数がいくつかの整数の積で表されるときのそれぞれの整数
素因数:素数である因数
素因数分解:自然数を素数だけの積の形に表すこと
※合成数は必ず素因数分解できる。
※素因数分解の一意性:1つの合成数の素因数分解は積の順序を考えなければ1通りであること
最大公約数・最小公倍数
【定義】
公約数:2つ以上の整数について,共通する約数
最大公約数:公約数のうち最大のもの
※最大公約数を英語の greatest common divisor の頭文字 gcd で,値を $g$ で表すことがある。
公倍数:2つ以上の整数について,共通する倍数
最小公倍数:正の公倍数のうち最小のもの
※最小公倍数を英語の least common multiple の頭文字 lcm で,値を $l$ で表すことがある。
※公約数は最大公約数の約数,公倍数は最小公倍数の倍数である。
※0でない2つ以上の整数の最大公約数は常に正の数であるから,最大公約数,最小公倍数を求めるときは,正の数に限定して考えればよい。
互いに素:2つの整数の最大公約数が1であること
【定理】
$a$,$b$,$c$ は整数で,$a$,$b$ は互いに素であるとすると,次のことが成り立つ。
- $ac$ が $b$ の倍数であるとき,$c$ は $b$ の倍数である。
- $a$ の倍数であり,$b$ の倍数でもある整数は,$ab$ の倍数である。
2つの自然数 $a$,$b$ の最大公約数を $g$,最小公倍数を $l$ とする。$a=ga’$,$b=gb’$ であるとすると,次のことが成り立つ。
- $a’$,$b’$ は互いに素である。
- $l=ga’b’$
- $ab=gl$
整数の割り算における商と余り
整数 $a$ と正の整数 $b$ について $a=bq+r$,$0 \leqq r<b$ となる整数 $q$,$r$ は1通りに定まる。
$a=bq+r$ において,$q$ は $a$ を $b$ で割ったときの商,$r$ は $a$ を $b$ で割ったときの余りという。
$r=0$ のとき $a$ は $b$ で割り切れるという。$r \neq 0$ のとき $a$ は $b$ で割り切れないという。
和,差,積の余り
$a=mq+r$,$b=mq’+r’$ とおくと
- $a+b$ を $m$ で割った余りは,$r+r’$ を $m$ で割った余りに等しい。
- $a-b$ を $m$ で割った余りは,$r-r’$ を $m$ で割った余りに等しい。
- $ab$ を $m$ で割った余りは,$rr’$ を $m$ で割った余りに等しい。
- $a^k$ を $m$ で割った余りは,$r^k$ を $m$ で割った余りに等しい。
余りによる整数の分類
整数を正の整数 $m$ で割ったときの余りに着目すると,すべての整数は,整数 $k$ を用いて次のいずれかの形に表される。
$\begin{array}{cccc} mk, & mk+1, & ……, & mk+(m-1) \\ 余り0 & 余り1 & …… & 余りm-1 \end{array}$